さて先手四間飛車対後手右四間飛車の解説も今回で3回目となります。
1回目は後手の右四間飛車側が居玉で飛車、角、銀だけで△6五歩と仕掛けてきたときの対策を解説してきました。
2回目は後手の右四間飛車側が居玉で、飛車、角、銀、桂馬を使って仕掛けてきたときの対策を解説しました。
さて、1、2回と後手の右四間飛車がとがめられたのはなぜだったか考えてみましょう。
それは、居玉だったから簡単に先手の四間飛車のカウンターを食らってしまったのです。
ではしっかり囲ってから右四間飛車が仕掛けてきたらどうするのというのが今回解説する内容です。
今回からは序盤はしっかりと組んでから仕掛けてくる変化となるので、一筋縄ではいきません。しっかりと読み込んで来る右四間飛車戦の対策を身に付けてから帰るようにしてください。
では解説をしていきます。前回に引き続き復習からしていきます。連続で読んでる人はもういいよと思うかもしれませんが、復習が定跡を身に付ける上で重要なのです。ましてや連続で読んでくれている人はさっき読んだばかりの内容をすぐに復習することになるので勉強効果も倍増ですね(笑)
その他の四間飛車党が対策すべき定跡の細かい記事は下のとおり。
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四間飛車対右四間飛車の序盤の復習
さて前回は居玉のまま右四間飛車側が仕掛けてきたときの対策を解説しました。ちょうど△7三桂、▲9八香車の局面まで駒組みをして、そのあとにすぐ、△8五桂と跳ねてくる変化を解説したと思います。
居玉のままだと、5三の地点に効きがなく、馬を作られて、後手の右四間飛車側はうまくいきませんでした。
各所重要な手が散見するので一応は確認しておきますが、
・先手四間飛車、後手右四間飛車ともに銀を追随させて、腰掛銀(▲5七歩~▲5六銀の形)の形にする。
・後手の右四間飛車が▲6二飛車としてきたときいつ仕掛けられてもいいように先手は▲7七角と上がっておく
・後手の右四間飛車が攻め駒補充のため△7三桂と跳ねたのを見て、▲9八香車と間接的に後手の角筋から香車を逃がしておく。
この3点は重要な手なので手に覚えさせてください。もちろんこの通りにしなくても悪くなるわけではないのですが、そこは自分で研究してみてください。基本的にこの形にしておけば一気に悪くなることはないという意味で初心者向けにお伝えしている内容です。
前回までの復習はこのあたりでしょうか。
△8四歩型右四間飛車が囲ってから仕掛けてきたときの対策
この局面まですらすらと駒を動かしてきました。もしわからないよという人は前の記事を参考に実際に盤に並べながらついてきてもらうと迷子の子羊にならなくて済むと思います。
前回はここから△8五桂馬と跳ねてきてきましたが、前回無理筋とわかったので後手の右四間飛車側は囲ってから仕掛けを狙ってきます。
19手目以降 △5二金右
前回5三の地点に効きがなく、先手の四間飛車にカウンターを食らったのでまずはしっかりと中央に厚く構える△5二金です。この一手が入るだけでも後手の陣形が締まった感じがしませんんか。このように一手で景色が変わるのが将棋の面白い所ですよね。
先手も後手が囲うのであればと追随して囲いを強化していきます。振り飛車という戦法は相手の仕掛けに対してカウンター(相手の手に乗っていく)をかます戦法ですので、基本的には相手の方針に追随するのが正着となります。何を指すか迷った際には相手が何をしようとしているのかを考えてそれに対応できるように構えておくのが良いです。
20手目以降 ▲2八玉、△4二玉、▲3八銀、△3二玉、▲1六歩
20手目以降からつらつらと先手後手ともに囲いあっていきます。先手は四間飛車党御用達の美濃囲い、後手は振り飛車対抗系の際の居飛車党御用達の舟囲いです。
途中△5二金右、▲2八玉の局面(先手の囲いが完成していない局面)で仕掛ける手もなくはないですが、今回はしっかりと囲った局面を解説します。実戦でも出現しやすい局面を解説することを優先します。
ここで重要なのが、6九の金を動かさずに保留しておくことです。これが後々の変化で役に立ちます。後手が全軍で6筋を狙っているのです。先手もけちらずに守りの要員を準備しておくのが大切です。
さて、お互い囲い終わったところで、満を持して右四間飛車側が仕掛けてきます。
右四間飛車の仕掛けはまずこの一手からです。
25手目以降 △8五桂
前回と同じくまずは、桂馬を跳ねる一手からです。右四間飛車の仕掛けは基本的に桂跳ねからはじまります。7七の地点の角をどかしてから攻めたいのです。角と桂馬交換になっては勝ち目がありませんので、当然先手の角は逃げますが、今回も候補手が3つあります。
・▲9五角(端に出て▲8四角を狙いつつ、飛車をいじめようとする手)
・▲8八角(桂馬から逃げつつ、次に▲8六歩から桂馬と取りに行く手)
どれも有力ですが、先手は左の金を動かさずに保留しているのにはわけがあります。その狙いも見るために今回は▲8六角の変化を見ていきます。
上記で述べた通り、後手の桂跳ねによる角取りから逃げる▲8六角です。
前回はこの一手が、間接的に5三の地点を狙っていたのですが、今回は後手もしっかりと囲っているため、5三の地点を5二の金が守っています。
27手目以降 △6五歩
前回同様で桂跳ねからの△6五歩が狙いの仕掛けです。右四間飛車はこの仕掛けにすべてをかけているのです。
この△6五歩には前回と同様で、
・▲6五同銀
・▲6五同歩
の両方ありますが、今回は後者の▲6五同歩を見ていきます。
28手目以降 ▲6五同歩、△9九角成
先手が▲6五同歩と応じたため、後手の角の通り道が開放されたため、△9九角成と馬を作られてしまいました。
事前に香車を9八に逃がしておいたので空成り(駒を取られずに成らすこと)させることができています。
しかし一方的に馬を作られてしまいましたが、大丈夫なんでしょうか・・・大丈夫です!!!狙い通りに進行しています。
現状△9九角成で馬を作られて、8九の地点の桂馬を狙われていますが、どう防ぎますか。
30手目以降 ▲7九金!!!
狙われている桂馬を、先ほどから移動させるのを保留していた金で受ける▲7九金が狙いの受けです。
よくよく見ると馬を作られたものの、▲9八香は飛車が、▲8九桂は金が守っています。
これが先ほど金の動きを保留したわけです。
さて、上図では右四間飛車側に早い仕掛けがないうえに1歩損となっています。何とかして攻め駒を前進させようとしてきます。
上図での候補手は
・△4四馬
・△5五銀
・△6一飛車
と3つほどありますが、今回は攻め駒を前進させて無理矢理にでも動いてくる筋を解説します。
実戦でも銀を△5五銀とぶつけてくる筋をよく見ますしね。
31手目以降 △5五銀、▲5五同銀、△5五同馬
後手の△5五銀ぶつけに対しては▲4五銀と逃げる手もありますが、ここは強く同銀と取る変化を見ていきます。
当然ですが、後手は取られた銀を取り返すために△5五同馬と馬を天王山の5五の地点に配置します。しかしここで先手からの切り返しがあります。
34手目以降 ▲6四角!!
これが眠っている角を活用する手筋の一手です。ちなみにここで後手が△6四同馬としてきた場合には、6筋の歩がどんどん前進していき、▲6四歩の形になれば6三の地点に銀を打ち込む筋や、角交換をしているので7三の地点に先手から角を打たれる筋等もあり右四間飛車側が不利になります。
35手目以降 △4四馬、▲9一角成!
後手が△6四馬と取れないので、△4四馬と逃げますが、先手は悠々と9一の香車を回収し馬を作ってはっきりと有利になりました。
ここから後手はさらに無理攻めをしてきますが、しっかりとした対応をしていきましょう。
37手目以降 △7七桂成!!
後手の右四間飛車は馬を作ってから7七の地点を狙ってくる筋が多いです。理由しては7七の地点に駒を集中させやすいこと、飛車が6八にいるため飛車取りに当たりやすいからです。飛車を追われるのは初心者に限らず段位の方もいやですが、ここではしっかりとした対応をすれば右四間飛車は怖くなくなります。恐れずに強く対応していきましょう。
38手以降 ▲7七同桂、△7七同馬
飛車を狙われていて気持ち悪いと思いますが、ここで▲4八飛車等と逃げてしまうと、後手の飛車に△6五飛車と走られてしまい右四間飛車が有利となります。一手でそこまで悪くなるのも将棋の怖いところです。
ここでは逃げずに強く戦いましょう。
強く戦っていいかの目安ですが、玉の堅さがどうかです。
現状お互い囲いには手がついていない状態ですが、後手の舟囲いに比べて先手の美濃囲いは1筋遠くにいます。これが大きく先手の囲いのほうが堅いといえます。自分のほうが囲いが堅い場合には強く戦っても大丈夫です。局面ごとで評価することで負けにくくなります。
では具体的に強く戦うとはどういうことか見ていきます。
40手目以降 ▲6四香、△7二飛、▲8一馬、△7三飛まで
先手の飛車が逃げることができないので、ただで飛車を取られるわけにはいきません。そういう時にはこちらも相手の飛車を取ってしまえばいいという発想をしましょう。飛車取りにするには先ほど回収した香車を打ってしまえばいいのです。
▲6四香の後で、仮に△6八馬と取られても強く▲6二香成と後手の飛車を取ってしまえば大丈夫です。例をいえば▲6四香、△6八馬、▲6二香成、△7九馬、▲5二杏と進めば、先手は後手玉に迫っているのに、後手の馬は先手の玉が遠ざかっています。このようにしっかりと読みを入れれば怖くないということも覚えてください。また、自分の攻め駒と相手の玉との距離感も意識できるようになれば段位も目指せます。
後手は飛車取りにされているので必死に飛車が逃げ回りますが飛車を詰まされてしまいました。
ここはもう攻めあうしかありませんが・・・。
45手目以降 △6八馬、▲6八同金
後手は飛車が詰まされてしまったのでのんびりもしていられないと馬と飛車を交換します。先手は素直に対応していいです。△6八馬の後、うっかり▲7三馬と取ってしまうと、△7九馬とされて、飛車と金をボロッと取られてしまいます。損をしないようにしっかりと読んでから指しましょう。
47手目以降 △8八飛、▲7七角!
後手は取った飛車をさっそく先手陣に投入していきますが、これには前回も出てきた受け方の▲7七角と受けておいて大丈夫です。振り飛車側は受けるときにはしっかりうけると終始一貫した対応をするのが勝利への近道です。
49手目以降 △9八飛成、▲7三馬
▲7七角が飛車取りに当たっているので、後手は△9八飛車成と香車を回収しますが、そこで先手は待望の▲7三馬と後手の飛車を取りはっきりと先手優勢です。
先手の玉は偉く遠く感じるのに対して、後手の玉は近く感じませんか?これが攻め駒と相手玉との距離感です。遠い近いという感覚は実戦でも求められる感覚なので何度も解説を読んで復習することをおすすめします。
この後も難しい戦いは続きますがダイジェスト版で簡単に解説していきます。
以下は飛ばし飛ばしでの解説になりますので初心者の方は流し読み、もしくは飛ばしてしまっても問題ありません。
50手目以降 △8五桂
後手としてはなんとか先手陣に迫りたいところですが、いかんせん角が邪魔です。その角に働きかけるのが△8五桂です。仮に▲6六角等と避けると△6八竜と金を取られて角取りにされてしまいます。困りましたが非常手段があります。
52手目以降 ▲1一角成、△2二銀打、▲2二同馬、△2二同玉
避けてもいいことがないときには切ってしまうのがいいです。▲1一角成と相手陣に飛び込み香車を取り、その後手に乗って銀も取ってしまえば2枚替えとなります。基本的に大駒との2枚替えは、2枚替えのほうが得なので成功です。
56手目以降 ▲5八金、△7七桂成
2枚替えをした後はしっかりと金を自陣に引き寄せるのがいい手です。遠くにいた金が囲いにくっついて堅い陣形になりました。このようにじっと金を寄せる手は悪手になりにくいです。大山名人も金寄りの妙手をたくさん指しています。往年の名人に習って金寄りを覚えましょう。ってかなり難しいことなんですけどね(笑)
58手目以降 ▲6三香成、△4二金、▲2六桂
しっかりと陣形を整えてから攻めに転じるのが呼吸です。▲6三香成と攻めます。当然△6三同金とはしてくれず、△4二金と逃げられますが別の手が生じています。それが▲2六桂です。これは次に▲3四桂馬と跳ねると2二の玉と4二の金の両取りにできます。ふんどしの桂という手筋です。中終盤では手筋を知っていればいるほど有利になります。手筋を少しずつでいいので覚えていきましょう。
61手目以降 △6八成桂、▲3四桂馬、△1二玉、▲4二桂成
後手としては、▲3四桂馬を受けて△3二香などもありますが、受けていてもらちがあかないと△6八成桂と攻めてきます。先手は狙い通りふんどしの桂馬を使って相手陣の駒をはがしていきます。
65手目以降 △5八成桂、▲同金、△同龍、▲4九金!、△7八竜
後手は金取りに構わず攻めあってきますが、ここはしっかりと▲4九金と受けておき手番をもらいます。先手は美濃囲いが堅く後手が迫る筋もありません。
70手目以降 詰みまで
手順に駒を拾い、数の攻めで後手の玉に迫っていけば失敗はありません。あとは駒を並べていけば詰んでしまうといったところです。
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まとめ
6筋に攻め駒を集中させる右四間飛車ですが、しっかりと対策をすることで恐れるに足りない戦法であることがわかると思います。
実際に実戦で対面した時には焦らずに準備をして退治しましょう。
次回は今回途中で出てきた変化をちょこちょこと解説できればと思います。
その他の四間飛車党が対策すべき定跡の細かい記事は下のとおり。
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