定跡

相掛かりの定跡はこれでOK!相掛かりの新常識のレビュー!飛車先はすぐに切らない?

相掛かりっていうと飛車先を真っ先に交換して銀をズンズン前へ進めて攻め合う戦法という印象が強い方も多いのではないでしょうか?

 

実はそれってちがうんですよ!

 

ここ最近の相掛かりではすぐに飛車先の歩を交換せずに、相手の出方(主に銀の使い方)を見てから飛車先を交換するようになってきました。

ここ最近では藤井聡太先生が先手番で▲2六歩と突くケースが多く、棋界でも▲7六歩と初手で指す手と同じくらい▲2六歩と突くケースが増えているように感じます。

そこで居飛車党に転向する方や、初心者でまず勉強する棒銀につられて相掛かりの知識や定跡を仕入れたい人が方が増えているのではないでしょうか。

ここ最近の相掛かりの定跡や、以前まで常識とされてきた「すぐに飛車先交換」や「先手が浮き飛車に構える」などが、現在では常識ではなくなった理由をすんなり解消してくれるのが今回紹介する中座真先生著の棋書「相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)」(平成30年2月発売)です。

相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)

こちらの本はちょうど6年ほど前から相掛かりの定跡が変化してきた歴史をわかりやすくまとめており、最新の定跡までを解説した棋書です。以前私が「初心者向けに解説した初心者向けに相掛かりの定跡を解説」で相掛かりの定跡について解説していますが、それとはだいぶ異なった定跡内容になっています。

将棋を始めたばかりの方には少し難易度が高い話もありますが、いまから相掛かりを勉強するという人には必読の棋書ですよ。

ちなみに注意事項として、「相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)」では飛車先の歩交換後▲2八飛の引き飛車の解説のみに絞られています。

▲2六飛の浮き飛車を勉強したい方は塚田スペシャルで有名な塚田先生の「相掛かりの秘刀 塚田スペシャルのすべて (マイナビ将棋BOOKS)」や、なぜ▲2六飛の浮き飛車やヒネリ飛車が衰退したのかの理由を知りたい方は「最新のヒネリ飛車 (羽生の頭脳)」を参考にしてください。

では簡単に相掛かりの最新定跡と「相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)」のいい点、悪い点などをまとめて紹介していきますよ。

相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)」の目次から

まず初めに目次から見ていきましょう。

管理人が特に参考になったのは序章の相掛かりの変遷です。ここで「なぜすぐに飛車先の歩を交換してはいけないのか」がわかります。この章だけでも読むだけの価値がありそうです。

また、後手の銀の位置がわかったので、飛車先を交換していく形も従来型と似ているのですが、参考になること間違いなし。

残りのP83 ページからの指し手は飛車先の歩交換を保留する定跡の解説がされています。正直各章で全く別の将棋になりやすいので、一つの章を読んでは実践で試してを繰り返して自分の棋風に合うものを採用して研究を進めていくことをおすすめします。

 

初心者向けに相掛かりの序盤について解説!

まず初心者向けに相掛かりの解説をする前にこちらの動画の方が分かりやすいんじゃないかと思ったので紹介させてください。また当サイトでも相掛かり棒銀を簡単に解説していますので参考にどうぞ。

下記は、元奨励会員で現在はYouTubeで活躍されているアユムさんの動画です。当たり前ですが、こんなサイトの管理人よりも圧倒的にわかりやすいのでアユムさんのチャンネル登録もおすすめします(笑)

アユムさんのチャンネル

 

私の相掛かり棒銀解説、上のアユムさんの動画では、飛車先をすぐに決める形の相掛かり戦法を解説してますが、「相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)」では飛車先の歩をすぐに交換する形のどこが先手に不満が残るか、飛車先を保留する形の優位性を説明したうえで以下に紹介する指し方を解説しています。

 

 

では初手より順番に説明していきますね。

初手▲2六歩、△8四歩、▲2五歩、△8五歩、▲7八金、△3二金

まず初手から▲2六歩と突いてお互いが歩を突きあえば相掛かり成立です。振り飛車の戦法は自分から飛車を振ることがほとんどなので指定の戦法に誘導しやすいですが、居飛車の戦法は相手の合意がなくては成立しません。まず、▲2六歩に対して△3四歩と突かれると先手としては極限早繰り銀などの戦法を目指す形になります。参考:「圧倒的最速の攻め!史上最速の攻撃戦法 極限早繰り銀のレビュー

 

上図△3二金以下

▲3八銀

上記で説明しているとおりですが、相掛かり戦法では長年先手からすぐに飛車先の歩を交換するのが定跡とされてきました。

しかし、6年ほど前から徐々にこの定跡に変化が表れています。それが上図で示すとおりで飛車先の歩の交換を保留する形です。

飛車先の歩を交換しないという考え方はもともと後手が編み出した考え方です。

飛車先の歩を交換することは、結果的に「どの位置に飛車を配置するのか」「どのように銀を使ってくるのか」を決めることになります。

後手は「先手の飛車の位置」「銀の位置」を確認したのちに、先手の戦略に合わせて自分の飛車の位置を決めるという発想を編み出したのです。

要するに飛車先の歩を交換すると、必然的に「飛車の位置も決める」という事になっていたのです。

飛車の位置を決めるということは今後の方針に大きな影響がでますよね。たとえば飛車を深く引き飛車に構えれば棒銀をすぐ使えますし、浮き飛車に構えれば塚田スペシャルをはじめとする攻撃的な戦法を使えます。

 

このように飛車の位置を決めるということはそのあとの展開を決めるようなものです。

先手が飛車の位置を決めてから、後手がその戦略に合わせて飛車の位置を決めるという対応をされれば指しにくくなるのは当然ですよね?

 

つまり後出しジャンケン状態になるということです。

 

 

だから後手がすぐに飛車先の歩を交換しないのであれば、先手も飛車先の歩を交換しなければどうなるか?というのが現在の相掛かり戦法です。

 

上図に戻り、銀を上げて相手の出方をうかがうのが飛車先の歩交換保留方法です。

 

△7二銀

後手も飛車先の歩交換を保留するため、銀を上げます。ここまで先後同形ですね。

この同形が今回紹介している「相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)」の基本図になります。

基本図からの3つの変化
  • ▲9六歩
  • ▲58玉
  • ▲6八玉

▲9六歩

▲58玉

▲6八玉

 

基本図より先手の指し手は一貫して飛車先の歩交換を保留している形です。ここから後手の出方をみて飛車先の歩の交換をしていきます。

なんとなく「あえて飛車先の歩を交換してないぜ」って思うと強くなった気になるのが不思議ですよね(笑)

 

相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)」の悪い点

▲浮き飛車VS△引き飛車が解説されていない

上記したとおりで、相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)では▲2八飛型の相掛かりだけしか解説されていませんので、もし後手でも相掛かりを指すという方は別の棋書で浮き飛車への対策を勉強しなくてはいけません。

とくに絶滅危惧種とされているヒネリ飛車もアマチュアではいくらでも見かけるので対策は必須ですよ。

ヒネリ飛車への対策は、最新のヒネリ飛車 (羽生の頭脳)がおすすめです。
少し古い内容ですが、羽生先生の著書ですのでわかりやすくまとめてあります。

最新のヒネリ飛車 (羽生の頭脳)

△6二銀型は紹介されていない

基本図が△7二銀型なのでどうしても仕方ないことなのですが、△6二銀型の将棋も見ないわけではないので解説が欲しかったかなぁと思います。

おそらく、右辺で戦いになった際に、金、銀の並びが壁形になるためプロ棋士での実戦例が少ないため解説がないのでしょうが、アマチュア向けの棋書では軽くそのあたりの解説があればいいと感じます。

 

 

相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)」の良い点・おすすめポイント

▲引き飛車棒銀対策が3つも書かれている

序章を読めばわかることですが、先手番で一直線に棒銀を仕掛けられた場合の受け方が3つも記載されています。

特に初心者や初めて相掛かりを指す人にとって参考になるのは、以下の図です。管理人も恥ずかしながら、「あーなるほどね」となりました(笑)

上図は一直線に棒銀を狙ってきた先手に対して、後手は浮き飛車で対応した局面です。

一見もう先手の棒銀が決まってしまっているようにみえますよね?

 

上図より△2四同歩、▲同銀

ここで△2三歩と打って歩を損しながら飛車も成り込ませてしまうことになります。

ここで後手には好手がありますよ!

 

 

 

△4四角(好手)

この軽く飛車先を受けるのが好手です。

ここから先手が▲2三銀成としてくる変化が気になりますよね?

 

上図より

▲2三銀成、△2七歩!!、△2六歩

さて、どうでしょうか。銀が気持ちよくなったので、後手が△2三同銀と対応すれば、▲2三同飛車成と指せますが、そうはいきません。

先手の銀が成り込んできた瞬間に先手の飛車の頭に歩を打ち込むのが手筋です。

連続で飛車の頭に歩を叩くとあら不思議、飛車が成り込むどころか成り込んだ銀がとられてしまいそうです。

このように△4四角上がりや△4四角打ちから飛車の頭を歩で叩く手筋は頻出するので参考にしてください。

 

3つの棒銀対策のうちの1つがこれですが、その他の2つも局面ごとで参考になるので必ずマスターしましょう。

 

端の関係がよくわかる

第2章の最後のあたりで端の関係をわかりやすく解説しています。端を突きあえばお互いがお互いに端攻めに合うリスクを抱えていることなど、それぞれの端をなぜ突くのか、突かないのかなどを意識できると初心者脱出といった感じがしますよね。

プロの対局を観戦していても、なぜ端を突くんだろう?って疑問を感じていた方。

「ふふ、その端は相手の姿勢を確認するための高度な待ちの一手なんだよね。」「ここで端を受けるということは端攻めは大丈夫ってことか」などと高度なプロ同士のやりとりをかんじとることができるようになりますよ(笑)

なんとなく、俺知ってるんだぜ感をだしたい人はぜひ読むべきですね(笑)

序盤の序盤までの解説なので自分の棋風に合わせて指し手を選べる

目次の部分でも少し触れましたが、下の基本図を見てください。

基本図以下の変化主に以下の3つです。

基本図からの3つの変化
  • ▲9六歩
  • ▲58玉
  • ▲6八玉

このため、どうしても序盤の変化までで解説が終了しています。まぁココセありまくりの終盤までの解説が欲しいということではないですが、どうしても序盤の序盤で定跡解説が終了している感があります。

これ以下の変化は本書を参考に実戦を繰り返し、自分の棋譜をソフトで解析したり、プロ棋士同士の対局を観戦するなどして相掛かりの呼吸を掴むしかありません。

特にアマチュアの短い対局時間での将棋においては相掛かりは勝ちにくい戦法という印象がありますので、できれば深くまで研究されている内容が見たかったですね。

 

しかし、逆を返せば、序盤の序盤までしか解説されていないので、自分の棋風に合った変化を選べるということです。

バランスよく指したい人は、上図より▲5八玉の変化を選べばいいですし、攻めの展開を望む人は▲9六歩からの展開を選べばいいです。なんとなく横歩取りにも対応できそうに感じるのであれば▲6八玉型を選べば良いと思いますよ。

 

まとめ

さて、いまから相掛かりを始めようと思うけど序盤の定跡がまったくわからないというかたこの棋書を手にとって、相掛かりをはじめてみませんか?

居飛車党でいくという人には必須の戦法です。すぐに強くなれるようなタイプの本ではないですが、相掛かりをはじめとする縦の戦いでの手筋や考え方などを吸収するにはもってこいの本なのでぜひとも手に取ってみてくださいね。

相掛かりの新常識 (マイナビ将棋BOOKS)

また、相掛かりを目指しているのに、初手より▲2六歩、△3四歩と変化された場合には前回解説した「圧倒的最速の攻め!史上最速の攻撃戦法 極限早繰り銀のレビュー」を参考に戦法の幅を広げてみてくださいね。